コーヒーは、嫌いですか?


課長は手に持った分厚いファイルを自分の机に置いた。

「今日中になんとかなりそう?山田さん、お父さんが具合悪いらしくて、真島さんに頼んでおいたって言ってたけど」

忙しなくジャケットを脱いでハンガーにかけ、私に向き直った。

「今日中、ですか?」

「明日の朝イチで使うから…って、彼女から聞いてなかった?」

課長は大きな身体を折り曲げるように、私を見た。

「いいえ!今日中ですね、わかりました。」

慌てて答え、自席に戻って椅子に座った。
ぼうっとして、なかなか仕事に戻れない。

金曜日のいつまでなのかを確認しなかった私が悪い。
頑張れば、終わる量だ。
お父さんが具合悪いなんて、私は聞いていないけど、もしかしたら本当なのかも知れない。
人の行動を悪意にとってはいけない。

私は気分を切り替えるため、引き出しを開けた。
テーマパークのお土産にもらったカラフルなお菓子の空き缶の蓋を取る。
スティック状のインスタントココアやミルクティーが入っている。
ココアの袋を掴んで、給湯室へ向かった。