カチャカチャと自分のカップを出していた吉崎くんの手が止まった。
私の顔を覗き込むように近づいた顔が、息をのむほど整っていることに今更ながら気付いた。
「竜、でしょ?藍里」
色っぽく笑う顔に、カーッと身体中の血が顔に集まる。
耐えられず俯くと、クッと笑う気配がした。
「手伝うから俺と付き合え、なんて言わないよ。俺がやりたくてやってるの」
「あ、ありがと」
「ん」
いつの間にか淹れられていた私の分のココアを受け取る。
吉崎くんに翻弄されっぱなしだった給湯室を出る。
いつもは踏まないようにしている廊下との境目を踏んでしまい、カタンと足元が鳴った。



