「藍里は、ちょっと無理しても頼まれたら断らないし、きちんと仕上げるからね。」
温かくなった彼の手は、励ますように私の手を優しく包んでいる。
「山田さん、そういう藍里につけこんで、やりすぎてたし。
課長もどうにかしようって言ってた矢先だったからね。先に俺が言っただけ。藍里は悪くないし、今まで通りでいいんだよ。」
「そう、なの」
「さ、お茶淹れたら戻ろ。俺も一緒にやるし」
吉崎くんがぱっと手を離すと、両手が自由になる。
なのに、彼の温もりが消えるのを少し残念に思う自分に戸惑った。
「で、でも、吉崎くんも忙しいでしょう?」



