「でも、俺の彼女に仕事押し付けて困らせんのやめて下さいって言ったら逃げてったし。これから無茶言われることもなくなると思うよ?」
吉崎くんは結果オーライと言いながら、握ったままの両手を左右にプラプラと揺らす。
どんな言い方をしたらあの山田さんが逃げるのか、想像しただけで怖いけど。
そこまでしてくれるのは、本当に私を想ってくれているようで、胸がきゅっと苦しくなる。
気恥ずかしくなって手をほどこうとしたら、ぎゅっと力を入れて阻止されてしまう。
「山田さん、いっつも同じ手で人に仕事押し付けて帰るから。今は藍里しか相手がいないんだよ、あの人。」
ちょっと叱られてる気分で下を向く。
知らずにいた自分の馬鹿さ加減と、そんな幼稚な手を繰り返していた山田さん。
はたから見たら、さぞ滑稽だっただろう。



