コーヒーは、嫌いですか?


頭が真っ白で黙りこくっていると、吉崎くんは見覚えのある意地悪な笑いを浮かべた。



「それに」



悪だくみをするような顔は、いつもこっそり「藍里さん」と呼ぶ時と同じ顔だ。



「山田さんに、藍里と付き合ってるんで、って言っちゃった」



さっき「好きだ」と言った表情とは打って変わって、イタズラっ子のように言う。

けれどその内容は、私にとってかなり過激で。いつのまにか「藍里」と呼ばれていることにも気付かなかった。



「え!困るよ!」



「困るの?」



何で?と言いたげに、吉崎くんは首をかしげた。

いやいや。

そもそも付き合ってないんだから、嘘じゃない。



「私たち、付き合ってない」



吉崎くんは、ちょっと不満そうに口をとがらせた。

さっきから、子供みたいな表情で私を困らせる。



でも、何故か不快だとは思わなかった。