見上げると、見たことのない強い眼差しをした吉崎くんと目が合った。
こんな、顔をするなんて知らない。
何の話をしているのか、わからない。
どんどんパニックに近い状態になっているのに、彼の瞳から目が離せない。
「そういう鈍いところも、人がよくて真面目すぎるところも、好きだよ。」
目を細めて、極上に甘い響きで私を誘惑する。
聞き逃してしまいそうな程サラリと言った「好き」という言葉は、私の脳内を侵食して埋め尽くす。
吉崎くんは、とろけるような笑顔で私を見つめ続ける。
それはまるで、愛しくてたまらないと言われているような錯覚をおぼえる。
急に、体温が上がった気がした。
顔と耳が、はっきりと熱くなる感覚を初めて知る。
鏡なんかないのに、首まで真っ赤になっているのがわかる。



