家に帰っても誰もいない。

私にお父さんはいない。

お母さんは仕事だ。

また今日も夜中に帰ってくるんだろう。

お母さんは…母は人気女優だ。

仕事が忙しいのはわかってる。

だからあまり話さない。

でも休みな日くらいなにかしようよ。

一緒に料理でも作ろうよ。

そう思ってしまう。

私は母が嫌いだ。

リビングに行くと茶色い封筒が置いてあった。

いつものようにお金と

『ごはん、これで食べて』

なんて文字がある。

今までに貰ったお金は遊びで使ってこなかった分がたくさん残ってる。

だから私はいらない。

お金はいらない。

キッチンに行って冷蔵庫を開ける。

レンジの中も見てみる。

ない。

お母さんが作ったものなんて一切ない。

いつもこうだ。

やっぱり、お母さんは私を娘だと思ってないんだ。

テレビをつけるとそこには母が映っていた。

ぱっちり二重でまつげが長い大きな目。

私が鏡を見るといつも見る。

私と母は目元がよく似ているらしい。

自分でもそれは自覚してる。

私が母に似た化粧をすれば、瓜二つと言えるだろう。

私は母に似たこの顔が嫌い。

「可愛い」なんて言われても嬉しくない。

私の嫌いな顔だから。

私はテレビを消してリビングを出た。