「ミケ、ご飯だよ」
「ニャア」
 
あれから、一年程経った。

私はペットも住めるアパートへと引っ越し、ミケと暮らしている。
ミケとの生活は慣れ、私の心は以前より晴れやかだ。

自分でもそう思うくらいには。
 
「ニャア」
 
私の足下に擦り寄って来るミケ。
そんなミケはいつも通りで、私はクスリと笑う。ミケを抱きながら、リビングへと向かう。ミケを抱きながら、クッションの上に座る。そしてふと、視界に入った写真立てを見て、口元が上がるのを感じた。
 

数ヶ月、家に一通の封筒が届いた。

差出人が書かれていない封筒を、恐る恐るあければ、中身は十枚の写真だった。
その写真は、あの部屋で、主にミケが撮った9枚の写真と、私が撮った一枚のミケの写真。
 

その写真を見た瞬間、私の目からは涙が零れた。
 

嬉しかったのだ、ミケが、人間の姿をしたミケが……もう一度見れたことが。


どんな形であれ、もう一度見れたことが。
そしてなにより、ミケとの時間が本当にあったのだと、確かに私は、彼と、あの空間で過ごしたのだと。


それが証明されたことが、とても嬉しかった。
 

写真立てに飾られた、私とミケのツーショット。

私はそれを見ながら、「ミケ」と、そっと彼の名前を呼ぶ。
 



そして優しく、彼の額に触れるだけのキスを落とした。