『互いが一分間目を瞑らないと出られない部屋』
 

部屋の真ん中に座りながら、そんな文字を見る。

以前と同じように、ドアの上には『1:00』とタイマーが掲げられていた。

私は視線をミケへと移す。
すると、ぱちりと、ミケと目が合った。
 
ミケは優しく微笑み、ゆっくりと目を閉じる。
私も同じようにゆっくりと目を閉じる。
すると、タイマーが動き出す音が聞こえた。
 

目を閉じると、自然と何かを考え始める。
 
この部屋にきたこと、ミケと出会ったこと、ミケと話したこと。

今までのことが、頭を巡る。
 

ミケと別れたくない。
 

そう思うのに、私は次の部屋へと進む。
ミケはおかしいと思わないのだろうか? 
いや、思っていても、言わないだけだ。

 
言ってしまえば、自分も進まないといけない理由を言わないといけないから。

 
私も同じだ。
ミケと別れたくない。
ミケも、別れたくないと言う。

じゃあ、どうして、次の部屋に進むのか。
一つの部屋にとどまれば、水も食料もあるのだから、少しでも長く一緒にいられるだろうに。
 

でも、それ以上に……この部屋を出たい理由があるのだ。
私にも、ミケにも。戻らないといけない理由がある。
 

それに……願ってしまう。
 

「雪、一分経った」
「……うん、次、いこう」
 

願ってしまう。



一度別れたって、もう一度ミケと出会える未来を。