あと四部屋だというのに、ここにきてこんなのが来るとは。
 
『あっち向いてほいをしないと出られない部屋』
 
この文に、ミケは喉を鳴らして笑っている。
 
「どうする、雪?」
「……さっさと終わらそう」
「おっけー。じゃあ、最初はグー!」
「じゃんけん」
お互い「ぽん」と声を合わせて、手を振り下ろす。
私はグー、ミケはパー。
ミケは明るい声で、「あっちむいて」と私に人差し指を向ける。
 
……どこを、向こうか。
 
そんな考えが、頭の中に過る。
「ほい!」
ミケのその言葉と共に、扉の開く音が聞こえた。

結局、私は上下左右、どちらにも顔を向けられなかった。

だけど、それはミケも同じだったようで。

ミケの人差し指も、ただ真っすぐ、私の方に向けられていいた。
 
「……なんだ、これ」
 
ミケのそんな呟きに、私は「ふふっ」と、小さく笑う。



どうしたらいいのかわからないのは、私もミケも一緒だった。