もう、あと五部屋。
ミケも、きっとわかってる。

あと五部屋で、どんなに足掻いても、私とミケは別れるのだ。
 
正面の扉に綴られた文を、ミケが声に出して読んだ。
 「『互いの指を絡めないと出られない部屋』だって。雪、どうする?」
 
相変わらず、意地悪な部屋だと思った。
どの指をだとか、どんな風にだとか、一言も書かれていない。
 
「……どうしよう、か」
私がそう小さく呟くと、ミケは「うーん」と少し上を見上げて考える。
「とりあえず座ろう」
「うん」と返し、私とミケは今までと同じように、部屋の真ん中に腰を下ろした。
「とりあえず絡める〜?」
そう言いながら、ミケは指をバラバラに動かしてみせる。そんなミケに、私は自然と眉間にしわが寄った。
「ごめんって」
ミケはそう軽く謝る。

ふと、私の頭に一つの案が過った。

「……じゃあ」
私は、自分の小指を立て、ミケの方に向ける。
 
「約束をしよう、ミケ」
 
「え……?」
 
「この部屋を全部出たら、もう一度会うって。約束しよう」
 
私の言葉に、ミケは目をまん丸にさせていた。

そして、一瞬瞼を閉じる。

瞼を開ければ、ミケは優しい笑みを見せ、「いいよ」と答えた。
ミケは私の小指に、自分の指を絡める。
その瞬間、扉の開く音がきこえた。