『おんぶをしないと出られない部屋』
 

そう綴られた文字に、私は思わずため息。
ミケは「よっしゃ!」と、ノリノリで、私の前に屈んだ。

「こい雪!」
「……」
 
ここまでノリノリだと、逆に乗りたくなくなってしまう。
でも、そんなわけにはいかないのがこの部屋で。
私は恐る恐る、ミケの背中に乗った。
「ちゃんと掴まった?」
「あ、うん」
「よっしゃ、んじゃいくぞー」
ミケはそう言って、スッと立ちあがった。
軽々と私を背に乗せて立ち上がるミケに、私は少し驚いてしまった。そして、「いくぞ!」と言って、走りだした。
 
「えっ、ちょっ、ミケ」

結構なスピードで走り回るミケに、私は掴む服をさらにギュッと握った。

扉はもうすでに開いていているのに。
なぜミケがこんなことをするのか、私にはさっぱりわからなくて。

けど、不思議と、嫌な気持ちにはならない。
揺れる髪、私の横を過ぎていく空気が、どこか心地よくて。
疲れたのか、ミケは扉の前で立ち止まり、私を下ろす。

息切れしているミケに、私は少し笑みが零れる。
 
「雪、楽しかった?」
 

そう聞くミケに、私は「うん」と、笑って答えた。