『背中に書いた文字を当てないと出られない部屋』
 

私とミケは顔を合わせる。
とりあえず、いつも通り部屋の真ん中へと腰を下す。そして、ミケは私に背中を向けた。
 
「梓、っと雪だった。雪、背中に文字書いてよ」
「あ、うん」
 
私はそう言って、何を書こうかと悩む。
 
「雪だよな、雪、雪、雪。うん」
「……別に、無理しなくていいよ」
「嫌だ。もう間違えたくない」
「……そう」
 
あ、そうだ。
書く言葉を思いつき、私はミケの背中に指をはしらせる。
 
 
ミケ、と。

 
「ミケ、書いたよ」
「……あ、うん。あー」
「ミケ?」
「……ミケ」
 
ミケがそう呟くと、扉の開く音がきこえた。
 
「なんか、さ、ちょっと恥ずかしくね?」
「え? どこが?」
「あーーーなんでもない!」
 

そう私の前を歩くミケの耳は少し赤く染まっていた。