部屋に入れば、楽しそうな音楽が流れた。
 

『フォークダンスをしないと出られない部屋』
 

私は自然と眉間にしわが寄る。
フォークダンスなんて、最後に踊ったのは小学生の時だ。

そんなことを、なぜ、今しないといけないのか。
 
「なあ梓、フォークダンスってどんなん?」
「えっ。ミケ、踊ったことないの?」
「ない」
「……珍しいね」
「珍しいんだ? へえ」
 
そんなミケが少し不思議に思いつつ、私はミケにフォークダンスの説明をした。
ミケが「わかった」と頷き、手を取り、音に合わせて踊る。
扉が開き、踊るのを止めようとするが、ミケは楽しそうに踊りを続ける。
 
「ちょっとミケ、いつまでやるの?」
「飽きるまで。意外と楽しくない?」
 
「全く」そう言って無理矢理、手を離す。
するとミケは「えー」と言いながら、寂しそうな表情を見せる。
 
そんな表情に、思わず罪悪感を感じてしまった。
私は視線を逸らしながら、ミケに手を差し出す。
すると、ミケは嬉しそうに私の手を取った。
 

罪悪感というのは、感じてしまったら負けだと思った。