『壁ドンしないと出られない部屋』
 

その文を読んだ瞬間、ミケはお腹を抱えて笑っていた。
 
「……何がそんなにおもしろいのよ」
「いやっ、こっ、こんなとこまで来て、こんなことやらされるなんて思わないじゃん?」
 
まあ、たしかに。
この真っ白な部屋に閉じ込められて、壁ドンをさせられるなんて。

私も、思いもしなかった。
 
「じゃあ、やっちゃう?」
「うん、やっちゃおう」
「ちなみにきくけど、梓って壁ドンされたことあるの?」
「ない」
「されたいって思う?」
「思わない」
「えー? なんで? 女の子って思うもんじゃない?」
 
ミケの質問に、私はため息をつき、答えた。
 
「確かにされたいって思う女の子は多いと思うけど、されたことがある女の子は少ないと思う。それなのにされたいって思うのも無駄だと思うし、壁ドンの魅力は私には理解できない」
「ふーん? まあ、やってよっか」
 
ミケはそう言って、壁へと向かう。私もミケについていき、壁に背を当てる。ミケが私の頭の横に手を当てると、扉が開く音が聞こえた。
 
「どう?」
「……見下されてるみたいで腹立つ」
 
素直に感想を述べると、「ぷっ」とミケは盛大に吹き出した。


そして、お腹を抱えながら、笑っている。
何と声をかければいいのかわからず、私はただミケが笑い止むのを待った。