しばらくは、こんなのばっかが続くのだろうか。
 

私は、扉のスクリーンに綴られた文字に、顔をしかめる。
そんな私とは逆に、ミケは喉を鳴らして笑っていて。
 
「どうする、梓。どっちが下やる?」
 
そうニヤニヤとしながら聞くミケに、私は軽くにらみつける。
 
「……ミケ、自分の体重知ってる?」
「んー、4キロくらい?」
「わけのわからないこと言ってないで、早くしゃがんでよ」
「はいはい」
 
ミケは変わらずクスクスと笑いながら、私の前にしゃがみ、背中を向ける。
 
「ほらっ、こい!」
「……そんな犬を呼ぶみたいに」

そう呟きながらも、私はミケの首の横に、足を通す。太ももで、ミケの首を挟み、首の後ろに座る。
 
「梓ー、立つぞー」
「う、うん」
「ちゃんと掴まってろよー。んじゃ、せーの」
 
ミケは、「よいしょっ」と、立ち上がる。
 
「……っ」
 
自分の身長では、絶対に見れない景色に、私は思わず息を呑んだ。
扉が開く音に、私はハッとし、「ミケ、もういいよ」と声をかける。
 
「えー? 俺はもうちょっとこうしてたいけど」
「は? なんで」
「女の子の太ももで顔を挟んでもらえる機会なんて、そうそうないじゃん?」
「……いいから早く下ろして」
 
私の低い声に苦笑いしながらも、ミケはゆっくりとしゃがむ。
そして、私の足が地面に着き、私は開いた扉に書かれた文字を見た。
 





『肩車をしないと出られない部屋』