「……」
「……」
 
「……なあ、あと何秒くらい?」
「目逸らしたら、また最初からになっちゃうでしょ」
「しっかし、『1分間目を合わせないと出られない部屋』って、意外と恥ずかしくね?」
 
そんなミケの言葉に、私は首を傾げる。
 
「……目を合わせることの、どこに羞恥心が?」
「……俺、梓のそういうところ困る」
 
『困る』という言葉に、私はさらに首を傾げる。

私のどういうところに、ミケは困るのだろうか。

そんなことを考えながら、じっとミケと目を合わせる。
すると、扉の開く音が聞こえ、ミケはすぐに視線を逸らした。
 
よく見ると、ミケの耳は少し赤くなっていて。

私は、もしかして……と考える。

そう思うと少しミケが可愛く思えてきた。
 
「梓、早く行こー」
 
ミケは、そう言っていつもの仮面を見せて言う。
そんな仮面を見て、私はやっぱり勘違いか、なんて思い、ミケの後ろを歩く。


髪を耳にかけようとしたとき、ふと、自分の手が頬と耳に当たる。
 


……あ、れ?

 





触れた頬と耳は、少しだけ熱かった。