開いた扉をくぐれば、そこはまた真っ白な部屋が待っていた。通った扉は閉まり、正面にはまた同じような扉がある。そして、その扉にもスクリーンがついていて、文字が綴られていた。

 『自己紹介しないと出られない部屋』

その文を見て、私は小さくため息をつく。そんな私を見たのか、三宅陽という男性は「とりあえず座らない?」と。
私は小さく頷き、部屋の真ん中に腰を下ろす。男性も、私の隣に腰を下ろした。

「なんか変なところに来ちゃったなー」
「……そうね」
「どのくらい続くのかねーこんな部屋がさ。どうする? このあと、『キスしないと出られない部屋』とかでてきたら」
「でてきたらするよ」
「ははっ」

そんな風に笑う彼に、自然と私の眉間にしわが寄った。
 
「そんなことより、早く終わらせよ。話してる時間がもったいない」
「そんなにここ出たい?」
「出たいよ。……出ないといけないの」
「ふーん。なんで?」
「それをあなたに話す義理はない」
「そりゃそうだ。じゃあ、さっさと終わらせよう。俺は三宅陽。ミケって呼んでよ。年はーんー二十歳! んで、好きな食べ物は魚でしょー、高いとこが好きかなー」
 
ぺらぺらと、自分のことを軽々しく話すミケ。そんなミケの話を聞くふりをしながら、適当に相づちを打つ。

一通り話したいことを話し終わったのか、ミケは「次はそっちの番だよ」と、私に自己紹介をするよう促す。
 
「……椎名梓。二十歳。よろしく」
 
それだけ言うと、ミケは目をまん丸にさせて。
扉が開く音がきこえ、その音にミケはハッと我に返った。
 
「えっ、それだけ!? もっと他に言う事あるでしょ?!」
「無いよ」
「え、えー。これからずっと一緒なんだぜ? もっと仲良くするためにさ」 
ミケの言葉に、私は首を傾げる。

「ここから抜け出しても、ミケは他人から変わりないでしょう?」
 
そう言う私に、ミケは「本気で言ってる?」と目をまん丸にしながら問う。
そんなミケの言葉に、私はすぐに頷いた。そして立ち上がり、「早く行こう」と言えば、ミケは「こりゃまいった」なんて小さく呟き、ゆっくりと立ち上がった。