「なんつーか、段々お題がバカらしいもんばっかになってきたなあニャン」
 
「そうだねニャン」
「ぷっ、梓似合わねーニャン」
「そういうあんたは、腹立つくらい似合ってるねニャン」
 
そうニヤニヤしているミケから、私は視線を逸らす。
逸らした先に見えたのは、『1分間語尾にニャンをつけないと出られない部屋』という文字。私は、小さくため息をこぼす。
 
「もうすぐ1分かニャンー」

ミケの言葉に、私は扉の上にあるタイマーを見る。タイマーは残り十秒。
 
「そうだねニャン」
残り五秒となって、私はもうすぐ終わることに、安堵する。
そんな私を見透かしたかのように、ミケは目を細め、口元を上げる。
この顔を、私はもう知っている。何か、嫌みったらしいことを考えてる顔だ。
 
「俺さー思ったんだよニャン」
 
ミケのやけに明るい声に、私は眉をひそめる。そんな私を見て、ミケは喉を鳴らして笑う。一分経ったことを知らせるように、扉が開く音が響く。そして、その直後、ミケは狙ってたかのように、言葉を発した。
 
「別に無理して1分間ニャンつけなくても、黙ってればクリアできたんじゃね?」
「は?」
「だってさー、前みたいに、黙ってもタイマー止まんなかったし」
 
言われてみれば、だ。
ミケの言う通り、無理して、ニャンなんて恥ずかしい語尾をつけなくても、この部屋はクリアできたはずだ。
 
「じゃあ、なんで言ってくれなかったの?」
 
ミケだって、ニャンなんてつけたくなかっただろうに。
「んー? だって、梓がニャンつけてんの、似合わなすぎておもしろくってさー。そんなおもしろいことを、止めるなんてやるわけないじゃん」
「……私、あんたのことやっぱ嫌い」
「ははっ」
 
そう笑うミケを睨むと、ミケは「次、行こ」と立ち上がった。