「なあ、なんでこんなことしてんだ、俺等」
 


「この部屋から出るためでしょ」
「……そのために鶴を折るってどうよ」
 
ミケは、ため息をつきながらも、4枚目の折り紙を取って、鶴を折り始める。
 
全く変わらない白い部屋に、一番に目に飛び込んだのは、真ん中に置かれた白いテーブルと白い椅子が二脚。
そして、机に置かれていたのは折り紙が十枚。

正面の扉を見れば、『鶴を十羽折らないと出られない部屋』と。

それを見て、私とミケは椅子に座り、一人五枚ずつ折ることにして、今お互いに四枚目まできている。
「てかさ、鶴を折るっていったら百羽だろ」
「ミケは百羽折ってまで叶えたい願い事なんてあるの?」
「はは」
そう笑って誤摩化すミケは、五枚目を手にとる。
「そういう梓はあんの?」
「……あるよ」
 
少し答えに迷ったが、私は素直に答えた。すると、ミケは少し驚いたように「へー!」と声を上げる。
 
「俺と梓ってさ、正反対だと思わない?」
「そう? 私は似た者同士だと思ってた」
「いーや、梓は俺とは反対だよ。月とすっぽん」
 
……月とすっぽんという言葉は確か、
 
「……その場合、どっちがすっぽんなの?」
「ははっ、もちろん俺! でも、梓は月って感じじゃないよなー」
「それ、褒めてる?」
 
私がそう首を傾げると、ミケは不敵な笑みを浮かべ「さあ?」と首を傾げる。そんなミケに少しイラッとしながらも、誤摩化すように私は五枚目を手にとった。
 
「あ、そうだ。似たような意味でさ、こんな言葉あったよな。雪と墨」
 
そんなミケの言葉に、私は思わず顔を上げた。
 
「え……?」
 
「ん? あるだろ、雪と墨ってことわざ」
「ああ……うん、あるね」
「梓は、月ってより雪だな、うん。こっちのが合ってる気がする」
そう言ったミケはもう五羽目を完成させていた。
「……そう」
私はそう小さく返事をし、鶴の頭の部分を折る。
すると、扉が開く音がした。