「最初はグー!」とミケが言い、
「じゃんけん!」と私が言い、
「ぽん!」というかけ声で、私とミケは手を振り下ろす。


振り下ろされた手は、私もミケもパー。
目配せをし、一斉に「あいこで、しょっ!」と、もう一度手を振り下ろす。
それは、また私もミケもパーで。
もう一度かけ声をし、手を振り下ろす。
次は、私もミケもグー。

三回、四回、五回と、繰り返すがあいこが続く。
 
九回あいこが続いたところで、ミケが「なあ」と少し疲れた声を出す。
 
「これ、ほんとにこの決め方で良いの?」
「そう決めたでしょ。じゃんけんで決めるって。時間がもったいないから、早く決めよう」

「……しゃーない」とミケは小さく呟く。
 
何がしょうがないんだ、と少し疑問を持ったが、「あいこで、しょっ」とかけ声をし、手を振り下ろした。その結果は、私がチョキで、ミケがパー。
 
「ほい、どーぞ」

ミケはそう言って、前髪を手で上げて、額を露にする。そんなミケの額に、私は親指を使い、人差し指をはじき、ミケの額へと当てる。
「いてっ」と小さくミケが声を漏らした瞬間、『デコピンをしないと出られない部屋』と書かれた扉が開く音がきこえた。
 

「しっかし、梓はわかりやすいなー」なんて、ミケの言葉に首を傾げながら、私とミケは開いた扉をくぐった。