「手、貸して」
蓮兄があたしの隣に座ってあたしの手を取る。
「あ、自分でできるよ?」
そう言って蓮兄が用意してくれた氷水に浸されたタオルを持ち上げようとして、蓮兄に阻止された。
「いいから。俺がやるよ」
声のトーンの低さに、胸の奥が疼く。
「・・こんな綺麗な手に火傷させてごめんな」
あたしの手を見つめて蓮兄が呟く。
「全然!綺麗じゃないし、」
こんなのすぐ治るよ。そう付け足そうとした。
「百合は綺麗だよ」
軽く眩暈を覚える。
「・・百合は、綺麗」
形のいい唇から紡がれる言葉。
あたしは呼吸を忘れる。
「・・そんな」
無理やり笑顔を作った。
「もー、蓮兄上手いなあっ。あお・・」
葵さんにも、同じ様に言ってるんでしょう?
そう言いかけてやめる。

