「あ、蓮兄もコーヒー飲む?」

ソファーに座っている蓮兄に声をかける。

蓮兄がゆっくり振り返った。

「ん。飲みたい」


何もかも見透かしているような瞳に一瞬体が硬直する。

平気よ、あたしは平気。

自分にそう言い聞かせている事さえ伝わってしまいそうだ。


「じゃあ淹れてくるね!」

キッチンに戻り火を強くして一気に沸騰させる。

お湯が沸いてインスタントコーヒーを淹れながら、あたしは初めて自分の指が少しだけ震えているのを感じた。


「百合、手伝うよ」

「きゃ・・」


急に背後から聞こえた蓮兄の声に驚いてケトルの熱い部分に触れてしまった。

「百合っ、」

蓮兄が咄嗟にあたしの火傷した手を掴み、水道水にあてた。

「・・大丈夫か?」

「・・うん、」

上手く声が出せない。

蓮兄に掴まれている感覚で、火傷の痛みがあまり感じられなかった。

「ごめん、驚かせて」

申し訳なさそうな顔で蓮兄が謝ってきた。

「氷で冷やそっか」


ソファーに座ってな、と蓮兄に促されてあたしは何も言わずに従った。