「・・斉藤くん」
そこには同じクラスの斉藤君の姿。
はにかみながら立っている。
「こんにちは。・・休日にごめん」
「ううん、大丈夫だけど。どうしたの?」
斉藤君とは学校でもたまに話す程度で、そこまで関わりがある訳でもない。
「あ、日村から住所聞いたんだけど。話したい事があって」
「薫から何も聞いてなくて・・何かな?」
斉藤君の言葉に、自分が朝から一度も携帯を開いていない事に気付く。
「・・俺、」
急に真剣な表情で斉藤君は切り出した。
「うん」
「倉川の事・・」
ここまで聞けば、この言葉の続きを予想するなんて容易いと思う。
斉藤君の言葉が途切れて少し気まずい空気が流れた。
「倉川の事が、好きだ」
しばらくしてから彼ははっきりと言い切った。
「・・斉藤くん、」
ごめんなさい、と続けようとして言葉をさえぎられる。
「俺さ、初めて倉川を見た時衝撃だった。・・すげー綺麗な子だなって」
彼は止まらず続ける。
「それだけじゃなくて、なんつーか、凛として知的で」
「・・ありがとう」
ここまで褒めて貰える様な人間じゃないのに。
あたしは申し訳なくていたたまれなくなった。

