「・・ふうん」
蓮兄があたしをじっと見つめてきた。
思わず目を逸らす。
「あのさ」
掴んでいた腕を離して、蓮兄が立ち上がった。
「・・男がいるんだけど」
「え?」
「家の前に。百合に会いにきたみたいだけど」
無表情の蓮兄。
「そっか、わかった…」
蓮兄はまたじっとあたしを見つめた後、リビングを出て行った。
あたしを待ってる男子?
・・誰だろう?
自慢じゃないけど、物心がついた時からあたしは蓮兄の事だけを見つめてきた。
蓮兄だけを想って、
蓮兄だけを追い続けて。
-そしてあの夜、手放したのだ。
あたしは髪を少し整えて玄関に向かった。
サンダルをつっかけてドアノブを回す。

