「百合?」
昴の声にハッとする。
「…お前さ、」
何かを宿した様な昴の瞳。
蓮兄よりも少しだけ深い色をしている。
見てると吸い込まれてしまいそう。
「…やっぱ、いいや」
昴は立ち上がった。
「…昴?」
「顔色ちょっと良くなった。一人で眠れる?」
そう言う昴の顔が哀しげに見えるのは、気のせいかな。
あたしはコクンと頷いて目を閉じた。
「…百合、おやすみ。」
「おやす、み…」
吸い込まれる様にあたしはまた眠りに落ちていく。
今度は怖くありませんように。
今度は、幸せな世界でありますように。
…そう願いながら、夢の中へと誘われる。
「百合、」
「…好きだよ」
…昴が、そんな言葉を残していた事も知らずに。

