「側にいてやるから、寝な」

昴があたしの枕元に腰掛けた。

「…昴、大丈夫だよ?」

「嘘つくな。顔色悪いのに」

「でも、昴も早く寝なきゃ」

「俺、明日何もないから」


…あの日から。

蓮兄と言い合いをしてしまったあの日から、もう一週間が経とうとしていた。

あれ以来、蓮兄とまともに顔を合わせていない。

お互いなんとなく避け合う日々が続いていた。


それはそれで、変に胸が疼く事も痛む事も無くて楽ではあるけど。

「…百合さ」

昴が唐突に口を開いた。

「なに?」

「…蓮と何かあった?」

ドキリとしたけど、平静を装う。

「何もないよ?」

「でも最近お前らよそよそしいっつーか。まともに話してないよな?」

「そう?そんな事ないよ!」

―あの日の事を思い出すと今も鋭い痛みが胸を突き抜ける。

「蓮兄、最近忙しそうだから。中々会うタイミングが無いんだよね」

「そか。確かに蓮最近帰りも遅いからな」

昴が思い出した様に呟く。

「…遅いよねえ」



昴の言葉に、葵さんの影がちらついた。


「今日帰って来てねーし」

「…え」


今日あたしは疲れていて、早めにベッドに潜り込んだ。

蓮兄、帰ってきてないんだ…

時計に目をやると、もう夜中の三時を回っていた。


…蓮兄は何処で何をしてるんだろう。