「凄い汗だな」

あたしの濡れた額を、昴が手で拭ってくれる。


“ありがとう”

そう言おうとするのに、上手く声が出てこない。


「…また怖い夢みたんだ?」

昴の問いにコクン、と頷く。


「…、お子ちゃま。」

フッと笑って、昴があたしの頭をグシャグシャ撫でた。

温かい大きな手。

蓮兄と同じ様に華奢で
蓮兄と同じ温かさで
蓮兄と同じ優しさで
蓮兄と同じ愛情で


あたしに、接してくれるのに



…顔は違うとはいえ、昴も蓮兄もずっと一緒にいたのに。


あたしはなぜ、蓮兄だけを愛してしまったんだろう。