若干重い足取りで、ようやく家にたどり着いた。
「…あれ」
ドアの鍵が開いている。
蓮兄が外に出たのだろうか。
「蓮兄、ただいま…」
息を飲む。
玄関にきちんと並べられた
エナメルのパンプス。
…誰の物かなんて、容易に解る。
「…や…だ」
無意識に唇から声が零れる。
「…なんで?」
何故、あの人がここにいるの?
靴も脱がずに家の中に入り込む。
ガラッと乱暴にリビングの扉を開けた。
「…っ。百合…」
そこには熱でやつれた顔をした蓮兄と
…葵さんであろう女の人が居た。
「あら、百合ちゃんね?」
名前だけは知っていたけど、一度も見た事は無かったその人は、とても綺麗な人だった。
自分が、惨めになる程に。
「蓮、妹さんすごく綺麗ね!びっくりしちゃった。あ、初めまして、私…」
「この人誰?」
葵さんを遮って飛び出した自分の声。
頭が混乱して理性を失う。

