「昨日は強引過ぎた。ごめん」


玄関で突然頭を下げた神島仁。

この男のその態度に拍子抜け。
また襲ってくるかもしれないって構えてたのに。

「俺とは話もしたくない?」

「そうですね」

私は迷いもなく即答。

すると私の返答に神島仁は眉を下げて傷付いたような表情を浮かべる。

そ、そんな顔されたら私が悪いみたいじゃない……。

「でも仕事はきちんとします」

その初めて見せた悲しげな表情に少し悪い気がして、勝手にフォローする言葉が口から出てきた。

「ありがとう……」

すると私の言葉に今度はホッとした表情を浮かべる神島仁。

その神島仁の唇の端っこ、昨日私が噛み付いて出来てしまった傷に私は今更ながら気付いた。