「おはよう」


すると目の前には現れたのは今一番見たくない男、神島仁で。
私は条件反射で勢いよく玄関を閉める。


「莉緒?開けないと会社に行けないぞ?」


扉の向こうから聞こえる落ち着いた神島仁の声。
一瞬見えた顔も笑顔だった。
私はこんなにボロボロなのに腹が立つ。


「何で居るんですか?私は貴方とお話しすることは一切ありませんけど」

「扉開けてくれないと俺が今から話すこと、アパートの住人に聞かれるぞ?聞かれても良いなら良いけど」

「……」


ガチャ。


「どうも」


笑顔の神島仁に益々腹が立つ。

だけど、昨日無理矢理コイツにキスされたことを坂本君には知られたくない。

彼が気にしてくれることは無いって分かってるけれど、知られたくない……。