成り行きであのまま泥酔状態の慧を部屋に招いてしまった斎は、ひとまず酔いが醒めない彼をソファーに寝かせた。冷蔵庫からペットボトルを二本取り出して、ひとつはテーブルの上に置く。
 水を一口飲むと、すっかり酔いが醒めた斎は、一息吐いてそこに寝転ぶ彼に事の顛末を尋ねた。
 
 
「それで、何があったんだい。そんなにベロベロになるまで一人で飲んで」
 
 スレンダーな彼の艶かしい脚が、ソファーからはみ出している。ついつい手を出してしまいたくなる欲情を抑え、頭を整理するために彼は紳士を装った。
 頬を紅潮させる彼は薄らと目を開け、部屋の天井を見上げながら腹の底から吐き出した。
 
 
「くっだらない」
 
 そう言って、鼻でクスリと笑う。
 少しばかり彼のその反応は意外だったが、彼も冷静に努めて穏やかに返した。
 
「何が」
 
「そんなあんたにメリットのない話聞いてどうすんの? あんた本気で私に惚れてるんでしょ? なら二度とないチャンスみすみす手放す気?」
 
 捲し立てる彼に少々言葉が詰まる。
 確かにこの状況は斎にはまたとないチャンスだし、二度と来ない本人からのご指名だ。斎だって満更でもない。その辺にいる女より、彼はとても魅力的に映るのだから。
 
「ヤリチ○コならヤリチ○コらしく好きな奴が誘ってんならさっさと抱きなさいよクソヤリチ○コ」
 
「何回ヤリチ○コって言うの。ちょっと落ち着こうよ」
 
 まるで暴れる闘牛を宥めるような気分で、興奮する慧をなんとか落ち着かせる。しかしながら、なかなか思うようにいかないのが彼のいいところであり、悪いところでもある。
 
 
「本当にくだらないことなの。その幼馴染みのこと」
 
「ちっ。マスター、こんな奴にバラしたのね。もうお店に行ってあげないんだから」
 
「俺が無理やりマスターから聞き出したんだよ。慧ちゃんのこと、本気だからね。ライバルのことはリサーチするものだろ?」
 
 すっかり機嫌を損ねてしまう慧を見て、誤解がないようにきっちりと筋は通す。多少無理やり聞き出した部分もあるが、その幼馴染みの話をマスターに聞く度に、内側のジェラシーが穏やかではなかった。