海岸通り 〜文治と由以香

文治や勇、真知子達と行く時はなにもない


たまたま一人で行く時、廊下でたむろする何人かの三年生が、目配せする



「 かわいこぶりっ子っ! 」



「おとなしいふりして、よくやるね」



「 男好き 」



「好きそうな顔してるぅ〜」



正面からは言わない

通り過ぎる由以香の背中にトゲ刺す

吹き矢のようにピシピシ突き刺してくる



ふりむく勇気も、言い返す度胸も、由以香にはない


礼子の蔭口は友達を通して耳に入るだけ

でも、三年生は由以香を待ちかまえて、聞こえよがしにわざと言う



重石を一個一個、積み重ねられていくみたい…

おとなしいふり、したことない…

これが私、なのに…



おとなしい子は彼氏作らないのかな

はっちゃけて明るい子だけが彼氏作るのかな

おとなしい子に彼氏って存在は似合わない?


由以香にも文治は似合わない?


でも、おとなしいからって負けるとは限らないよ


言い返しは出来ないけど、根性では負けないからねっ



“ てやんでぇっ! こちとら、いじめられて我慢するのは

文治にさんざん鍛えられてきたんだよっ!

これぐらいなんでもないんだよっ ”