海岸通り 〜文治と由以香

「だめだめ、ちゃんと寝らな? 大丈夫? 睡眠不足で具合悪いとかない?」



「ううん、大丈夫、平気平気、今日は早く寝るから」



「電話は? しないがいい?」



「 ぅうん、してっ?♪ 」




ぱっ♪♪

花が咲いたみたい、明るくなる文治の顔


ここが学校じゃなくて浜だったら、二人だけだったら

多分もう由以香の手、握ってくれてた…



今、こんなに嬉しそうな顔したんだもん、文治が好きなのは由以香だけだよね


信じていいよね、文治のこと…






ん?

廊下のはじから、視線感じる

礼子がこっち見てる…


ぷぃっ…

教室入ってく…




「なんや? あいつ 急に愛想失くして」



一学期までは文治と由以香を見かけると、礼子はすぐ間に割って入ってた


すぐ輪に加わって、いつの間にか文治とだけ会話してた…





二学期になって何日も経たないうちに、礼子の蔭口が耳に入り出す



「文治に気のないふりしててさ、告られたらすぐOKしたらしいよ」



「やりかたがセコいやん?

男なんか文治なんか興味ありませんって顔してたくせに」