「あんた、恋した事ないのね」
「うん、多分。カッコイイとか、そういう感覚は人並みにあると思うんだけど、なんだろう…これ以上、悠里や葵以上に大切な存在がいるとか、そういう風に考えた事がなかったからかな…」
「理想とかないの?こんな人と付き合ってみたいとかあるでしょ?」
「そりゃあ…あるよ!」
「あら、意外ね」
「格好良くて、大人っぽくて、リードしてくれるような、優しい人が好きかな?」
「その悠里っていうのはリードしてくれなかったわけ?」
「んーリードというか、うーん…いざって時は張り切ってるけどさりげないリードはないし…まぁ幼馴染だからね。あと大人っぽさっていうより弟みたいに可愛いっていう方が正しかったし…あ」
「あ?」

私は話している最中に自分の最大の落ち度が分かってしまった。

「”あ”ってなによ、気になるわね」
「私、2人以外とあんまり関わって無くて、他はって感じだったからなぁ…」
「致命的じゃん…」

二度目の絶句した沙羅と、今度は沙羅が「あ」と言う。

「じゃあ、今って最大のチャンスじゃない?」
「え?なんで?」
イマイチぴんとこなくて沙羅を凝視すると沙羅はもどかしそうに言う。
「だって、今その2人とは疎遠なんでしょ?なら色んな人と関わってみるチャンスじゃない!そ・れ・に!」
ピシリと私を指さして男前な顔で妖美に笑った。
「それに?」
「あんたには色がないのよね」
「色…?イメージカラー?」
「色っていうのはね、貴方にしかない色のこと」
「私にしかない…色?」
「由真、あんたはつくづく流されやすくて曖昧な子よね。だから赤だったり黄色だったり、中間色だったり、色々定まってないのよ」
「うん…?」