なっつんをぼーっと眺めていると。
男子の声がこっちまで聞こえてきた。
その声に反応して男子側のコートを見てみれば。
柴崎くんがシュートを決める瞬間だった。
スリーポイントゾーンから投げられたバスケットボールは。
綺麗な弧を描いてそのまま。
リングに当たることなくネットに吸い込まれていった。
綺麗なフォームに正確なボールさばき。
柴崎くんはバスケ経験者なのかもしれない。
……気になる。
教室戻ったら聞いてみよう。
柴崎くんの情報だけない。
他の子は会話をしてたくさんいろんなことを知れたけど。
あいさつ程度しか交わしたことのない柴崎くんの事は。
名前以外、なにもしらない。
私は、柴崎くんは柴崎風って名前なんだってことしか知らない。
本当、なにも知らないんだ。
なんか、悲しいな。
隣にいて、誰よりも近い距離にいるのに。
私だけ。なにも知らない。
……仲間はずれ、かな。
「行くよ、揮那。」
「え、?」
「試合、早くしなさいよ。」
「ああ、今行く。」
気付けば、なっつんは私の膝の上からいなくなっていて。



