振り向くことなくそう呟く柴崎くん。
その時、何かがはじけた様な気がした。
「いい加減……。
いい加減目を見なさいよバカぁ!!!」
「……えっ。」
イライラが爆発した私は、柴崎くんの腕を掴んでいた手を離して。
そのまま柴崎くんの両頬に当ててこっちを無理やり向かせた。
咄嗟の事で反応できなかった柴崎くんが。
されるがままこっちを向かせられて、よろけながら私の方を見た。
やばい、なっつんに引くって言われた行動しちゃった。
どうしよう、怒られるかも。
そう思っても後の祭り。
振り向いて私の顔の近くに寄せられた柴崎くんの顔は。
逸らされることなく私の瞳と視線を交わらせた。
初めて、目を合わす。
そして、視界を共有させる。
陽の光を映した柴崎くんの瞳は溶けそうほど透き通っていて。
淡い紫。紫陽花。ラベンダー色。
世界が、見える。
柴崎くんの世界。紫色の。艶っぽい。世界。
嬉しい。目が合った。
2か月、焦がれていた日が、今来た。
嬉しくなって口角が上がりつつあると。
柴崎くんの表情が変わっていくのに気づいた。
「し、ばさきくん?」



