「奈曽井、保健室行って来い。
おい、保健委員は……。」
「僕が行きます。」
その声にびっくりして振り向けば。
無表情の柴崎くんがすぐそこまで来ていた。
気付けば男子も周りを取り囲んでいて。
心配そうに声をかけてくれていた。
「奈曽井さん、動かないでね。」
「え、ちょ、ええ!?」
そう言われた次の瞬間。
私の体は浮いていた。
な、なにが起こってるの……?
私は今、柴崎くんの腕の中にいるの……?
柴崎くんは私を軽々とお姫様だっこして。
そのまますたすたと体育館の出口に向かって歩いていった。
クラスメイトは唖然とした後、おお~と感嘆の声を上げ。
そのまま試合を再開していた。
淡白なのか、ひやかさないあたり優秀なのか。
うちのクラス、なんなの……。
ちらり、柴崎くんの顔を見れば。
顔色を変えず真っ直ぐ前を向いていた。
そういえば、保健委員だったよね。
……これも、義務ですか。



