小学生のとき、私は好きだった男の子に意地悪をしていた。
私は元々お転婆でイタズラが大好きな子供だった。
クラスでのあだ名は「ガキ大将」。
近所の人からは、所謂、悪ガキとして扱われていた。
しかも、当時の私はその立ち位置が気に入っていた。
だから、ただいじめることでしか、彼に接することができなかったのだ。

ある日、彼を泣かせてしまった。
小さい公園に、小さく嗚咽が聞こえていた。
私はそんなつもりは全然なくて、いつもの悪ふざけだった。
彼は左手で目を覆って、右手でズボンを握りしめて、唇を噛み締めて、声を押し殺しながら泣いていた。
指の隙間から、涙がこぼれていた。
彼の泣く姿を見て、胸が苦しくなった。
こっちまで泣きたくなって、いよいよ涙が出そうになって、急いで彼に背を向けて、
「こんくらいで、泣かんでよ。」
と、小声で言って走って帰った。
それから何となく接しづらくて、私は彼に絡まなくなった。

中学生になって、彼は弓道部に入って、筋肉がついて、かっこよくなっていった。
一方、私はテニス部の幽霊部員になっていた。
帰りに弓道場を覗いて、入部希望者だと間違われないうちに帰っていたからだ。
彼は学校で有名なイケメンになった。
見学者は増えていって、ファンクラブも作られた。
なんだか、遠くから見ている自分が気持ち悪いなと思い、彼を見に行くのをやめ、彼のことを考えるのもやめた。
高校は別々になった。
彼は遠い全寮制の学校にいったらしい。
もう会うことは少なくなるだろう。
こうして、私の初恋は終わりを告げた。