顔をしかめて思いっきり奴を睨む。
思いの外橘の顔が近くにあったので、すこしのけぞってしまったが。
「へえーいい音すんのな。このピアノ。あーごめん邪魔しちった」
ニヤニヤすんな。近づいてくるな。
橘。まじでお前空気読め。
「いやあ。琴葉ちゃんが弾いてるの見て、俺も弾きたくなっちゃってさー」
関わりたくない一心で、私は瞬速で席をどく。
「あらーありがとうー。やっさしいなぁ琴葉ちゃん」
気持ち悪いなさっさと弾けこのグズ。
……その念が伝わったのだろうか。
ジャーンジャーンジャ「ってぇええええ!!!」
橘はピアノの鍵盤に指を挟んだ。
