千羽 side
数分前。私たちがいた教室前の廊下を、奏士が駆けていくのが見えた。
「え、そう………」
もご、とりんねちゃんに口をおさえられたから奏士には気づかれなかったけど
「…………」
りんねちゃんは黙ったまま。
でも、その顔には焦りがあって。
「……行ってくる」
「え、由羽くん……」
なら私も、と席を立とうとしたら、りんねちゃんが手首を掴んで引き止めた。
「由羽、行っておいで」
由羽くんは教室から足早に出ていった。
なんで引き止めたの、と。
りんねちゃんに聞くことも出来たけど。
本当は、ずっと。
分かってたかもしれない。
私"も"片思いしてるんだってさ。
……今更だし、今は琴葉を応援すれば大丈夫だからよかったけどさ。
この先、由羽くんはどうなっちゃうんだろう、って心配なところはあるんだ。
