奏〜君に届けたくて〜

テンポをあげたのは、癪だったからだ。

この曲は本当に本当に素敵な曲なのだ。

それをわざわざ、コンサートで披露するように丁寧に弾いてやる必要がどこにある。


こんな男に対して。






そして。弾いていて気づいた。

この曲はテンポをあげるとかなりきついらしい。音量はそのままに、少しずつ、腕から力を抜いていく。

腕を休ませながら手首で響きを補って

すべるように鍵盤の上を指が駆け巡る。


曲は中盤に差し掛かる。