その日は授業にほとんど集中出来なかった。

…………話を聞いていないのはいつもの事だけどさ。



いつも以上に先生の声もクラス内の喧騒も耳を通り過ぎてしまって。




「琴葉、大丈夫?」

顔をあげると、千羽が眉毛を八の字に寄せて立っていた。

「あ、うん。大丈夫……」


「でも顔色ちょっと悪いよ?保健室、行く?」

その気遣いの心に触れて、なんだか涙ぐみそうになる。


「飯塚さん、涙目だよ……どこか痛い?」


「……ううん、大丈夫」

そう言って顔をあげると何故か少しふくれた千羽と目が合った。

「いや大丈夫じゃないよ!琴葉、無理しないの。連れてく連れてく!!」


あ、え。


私は強引に腕をひかれて、わたわたしながら教室を連れ出された。