奏〜君に届けたくて〜



……なんて言う暇もなく。




ぱっと橘は離れた。

「、え」


「はいはい。お望みどーり離れてあげましたよー」



…………全く。なんなのよ、この男は。



橘の体が離れたおかげで少し涼しくなった。


………ほんとにほんとに少しだけ寒いけれど。









「ま。琴葉には放課後また会えるしー?そんじゃーねー」






一度も振り返らず、橘は元音楽室を後にした。






「…………まだ、顔が」


熱かった。