奏〜君に届けたくて〜



『琴葉』

懐かしい、漢字の響き。


私の名前を呼んだのは。


『……先生』



『怪我は。大丈夫か』


『はい』



『……傷跡は』



『……』



私は無言で袖をまくって見せた。






手首下から肘上にかけて、内側を縦に走るその跡は。




ちょっと、痛々しく見えてしまったかな。