『なあ。コトハ。どうするんたよ。これじゃあ俺たち、演奏出来ない』

その翌日。そういって泣きついてきたのはコンサートマスターのジンだった。

『何言ってるの。出来るわよ。主役の私が落ちてないもの』

『いや、それはそうだけどさ。俺たちの指示役がいないんだ。こんなんじゃ、とても本番の舞台でピタリと音を合わせることはできないよ』

『何言ってるのよ。指示役なら、いるわ』

『えっ』

『ジンの目の前にいるでしょー?』

私は得意気に自分を指さした。




結局、私はフィルハーモニーの人達をただただ引き連れて、振り回していただけ。


……それでも彼等の技術量のおかげでなんとか公演を成功させられた。

でも、私は。