私はその時、人生の最高潮にいた。

そこからどんどん堕ちていくなんて、露ほども思っていなかった。




『琴葉。アメリカのフィルハーモニーから招待状だよ』

『ほんと?!やっとかぁー。私がついにオーケストラと共演するのね』

『おいおい。あんまり調子に乗るなよ、琴葉。向こうは向こうで強者がごろごろいるぞ?』

『大丈夫だって、スティーブン先生。私を誰だと思っているの?』

『全く。君は本当に手間暇かかる生徒だったよ。』

『答えになってないわー』

『もう少し口が良ければ完璧なのに』

『何言ってるのよ。人に媚びるように敬語使うなんてごめんだわ』

『あんまり、無理はするなよ』

『分かってるって。先生は心配性なんだから』




この時から、先生は気づいていたんじゃないか、って。今は思う。





私の言葉が。全てを壊して、無くしてしまうんじゃないかって。