握られた手が熱い。
どうしよう、どうしよう――――……。
「食器は俺が洗うからどいてろ」
「……え?」
予想外の言葉とともに手を離され、藤堂先生が私を押しのけて腕捲りをして食器を洗い出した。
「食器……。あ、ありがとうございます……」
ホッと息を吐くと、藤堂先生が苦笑しながらチラリと横目で私を見た。
「何か期待した?」
「し、してません!」
「応えてやってもいいけど?」
応えるって何!?
そんなのいらないとばかりに、首を横にブンブンと振る。
「結構です! ていうか、してませんから!」
「俺もそのつもりで来た訳じゃねぇよ」
「当たり前です!」
ムッと睨むと、それが面白いのか笑っている。
なるほどな。きっと私がこの状況に気が付いて葛藤していることなんて、とっくにバレてたのだろうと知る。
でなければ、こんなふざけたことしない。



