「朝比奈、料理上手いな。美味しい」


肉じゃがを食べながら、藤堂先生は感心したようにパクパクと食べてくれる。
本当にお腹が空いていたようで、食べるペースは早いものの、お箸の持ち方や食べ方が綺麗なので見ているほうが気持ちいい。

美味しい美味しいと素直に褒めてくれるから、満更でもない気分になる。
先生が購入したお総菜も摘まみ、あっという間に夕飯を終えた。


「ごちそうさまでした」
「いえいえ、お粗末様でした」


満足そうな様子にくすぐったくなりながら、食器をキッチンへ持っていく。洗ってしまおうかと腕捲りをすると、後ろから藤堂先生の手が伸びてスポンジを持ったその手を取られた。


「えっ……」
「朝比奈」


藤堂先生が私の手を取ったまま真剣に見下ろしてくる。
その眼差しにドキンッと心臓が跳ねた。

まさか、うそ……。
そんな様子、微塵もなかったのに……。

消えたはずの動揺が浮かぶ。
なんとかそれを顔に出さないよう隠しながらも、心臓は早鐘のようにうるさい。