急にとんでもないことに気がついてしまったせいで、挙動不審になってしまう。
「どうした?」
「いえ、別にっ」
不思議がる先生に大きく首を振った。
いやいや、ていうか、私! 意識し過ぎでしょう!
これは怪しまれるって。
いくらなんでも、先生はそんなつもりは微塵もなさそうだし!
ご飯食べて『おやすみなさい、さようなら』ってなるに決まっている。
麦茶を注ぎながら、冷静になるよう自分を諭す。
なにより……。
飲み物を両手にキッチンからリビングにいる先生の後ろ姿を眺めた。
ラフな姿で足を組んでテレビを見ながら笑っている。
「……ないな」
下心あるような人間が、こんなに寛いで過ごしているはずがない。
緊張感の欠片もないわ。
ホッと気持ちが落ち着いていく反面、リラックスした様子で座っている先生のつむじを女として複雑な思いで見つめたのだった。



